繭虫の眠りかた

「何の苦労も知らずに、蝶よ花よと愛でられて育った顔だな。
俺とは大違いだ」

少年の手が胸をつかみ、白い肌に爪が食い込んで
胡蝶の唇から苦痛のうめきが漏れる。

「いや! 誰か……!」

思わず口をついて出た大声に対して返ってきたのは、あっははは! という哄笑だった。

「どんな気分だ?
腹違いとは言え、血の繋がった実の弟に陵辱されるってのは」

氷のような畳の上で冷酷な囁きを耳元に聞きながら、
胡蝶は、この薄暗い『座敷牢』へ来た時のことを思い出していた。


   *


綺麗な少年だと思った。


頑丈な木を組んで作られた格子の向こうに正座した、己と同じくらいの年と思しき少年を目にして──


カイコの吐く絹糸のような銀の髪、

澄み渡った空の如き青い瞳、

この国の人間とは明らかに異なる彫りの深い目鼻立ち、


まるで話に聞く異国の人間のようだとその容姿に驚きつつも、胡蝶はとても美しい少年だと思った。