「なるほど、うるさいと思っていたらあのグループか」

と私。

「っていうか、あれ女子と男子何グループ分よ。もうどれがどのグループか分かんないわよ」

と春。

「遠藤が発端なのに、本人めちゃくちゃ呑気だねー」

と玲菜。
ふと、尚夏を見てみる。尚夏は、じっとキヨを見つめていた。ヤバい、傷ついてるかも。
話題を変えようと、私は足りない頭で考える。そして思いついた話題。

「あ、尚夏の弁当可愛いー」

「え、ミツも同じ弁当じゃない」

尚夏がさらりとツッコむ。「私はお前のために!」とは、あえて言わないでおく。
仕方なく、また話題を探す。すると、目の前からひょいとウインナーが奪われた。

「!?」

びっくりして、横を見る。そこには、キヨがいた。

「お、うまい」

「あんた何平然と人の弁当盗ってんのよ! 返せ! そのウインナーを返せ!」

キヨの襟をつかんでゆさぶる。

「いや、だってさあ、弁当忘れたからさあ」

「じゃあせめて盗る前に断りなさいよ! このプチトマト恵んでやったのに!」

「ミツ、ちゃんと野菜も食べなさい」

左横で、尚夏が言う。プチトマトは嫌いなんだと、何回言えば分かってくれるのだろうか。

「そういや、弁当ってやっぱお母さんが作ってる?」

唐突な春の問いに、玲菜が頷いた。
尚夏も答える。

「うちは、基本私が作ってるけど、最近、卵焼きだけはミツがね」

「「「え、ミツって料理できんの?」」」

尚夏の答えに、春と玲菜とキヨがハモる。

「できるわよ! 卵焼きなら完璧よ!」

箸で卵焼きをつかんで、三人に見せる。ちなみに、今回のは良い出来だ。

「こないだ白だし入れすぎて、めっちゃくちゃ辛い卵焼きにしたじゃない」

「うるさいな! そういうのは、言わなかったら、無かったのと同じなの!」

はいはい、と尚夏が笑った。