スゥ、と息を吸う。
目に映る尚夏は、少し暗い顔をしていた。
その顔を晴らすために、私は、正直な気持ちを言う。

「私、キヨの事、好きじゃない」

それを聞いた尚夏は、私に訪ねて来た。

「嘘」

「嘘じゃないよ、ほんとだって。私が、気持ち押し殺すタイプだと思う?」

そう訊くと、尚夏は少し悩んだ後、

「思わない」

「よろしい」

あれ? よろしいのか? ……まあいい。

「だから、気にすんなって。ね?」

なるべく優しい声を心がけて、尚夏を見つめる。尚夏は、少し微笑みながら、頷いてくれた。

「よかった……」

安心したのか、尚夏はバタリと後に倒れた。一応、他人の部屋なのだが。
そんな尚夏の姿を見て安心した私は、ゲームをしようと携帯を取り出した。

──しっかし、キヨ達おっそいなー。

そう思った時、ふいに尚夏が言った。

「ねえ、ミツ。頼みがあるんだけど、いい?」

「出来る事なら、やってあげるよ?」

私がそう答えると、尚夏が飛び起きた。
そして、少々迷うような顔をした後、私に言う。

「清太にさ、嘘の告白でもして、気持ち確かめてもらえないかな!?」

「は!?」

思わず、携帯を落としてしまった。ゲームオーバーの音が、室内にむなしく響く。

「ちょ、ちょっと待って!? 私が、キヨに、告白?」

そう問うと、尚夏が深く頷いた。

「頼むよう……後から、嘘でしたーっ☆ってさ……駄目かなあ」

「駄目!」

即答する私。
いくらなんでも、人を試すだなんてごめんだ。

「ミツぅ……」

「駄目ったら駄目」

「……駄目……? じゃ、じゃあ、清太に、「私の事好き?」って訊いてみてもらえない?」

「………」

「ミツー……」

「ああもう分かったよ! 分かったから、その涙目やめてよ! 訊くだけだからね!?」

ついに折れた私に、尚夏がパアッと笑顔になった。ありがとう! を何度も繰り返している。

今日分かった事。
尚夏は、意外におねだり上手……。