お茶と……お茶菓子の団子が、三つ。
もし、このお茶菓子が四つなら、間違いなく私達のなんだろうけど……。
キヨ兄が、代表して問う。

「母さん、誰か来るの?」

浅海さんは、ふふっと笑って、

「陽子と、香澄が来るのよ」

と。
陽子さんは、浅海さんの友人。ちなみに、お母さんの友人でもある。それはいいんだけど……。

「香澄……って、お母さんが来るんですか!?」

驚いて私が訊くと、浅海さんがキョトンとした表情をする。くぅっ!小動物みたいで可愛いなあ、この人は! 短い黒髪がよく似合ってるなあ! 私は似合わなかったのに!(ウィッグだったから切ってないけど)

「香澄から聞いてないの?」

「初耳です!」

「そうなの?」

目を丸くする浅海さん。この人こそ、香澄って名前がピッタリなんじゃないだろうか。
ようやく、少し驚きが薄れてきた。キヨ兄が、浅海さんに訊く。

「ってことは、ここは……」

「え? ここを使うつもりだったの? ここは困るわ」

「客間は? 畳だけど」

「あそこは駄目。散らかってるし、なにより、四人は狭いでしょ?」

終いには、二人で腕を組んで考え込んでしまう。
私が、「なら私の家で」と提案しようとした時だった。

「あ、そうだわ。なら、二人の部屋で、二人ずつ勉強したらどう?」

「「「「え」」」」

思わず、四人揃って、マヌケな声を出してしまった。
浅海さんが、そそくさと麦茶をコップに入れ始めた。どうやら、それで決定らしい。

──幼馴染とはいえ……思春期の男女なんですけど……。

そう思ったものの、言わなかった。
っていうか、言えなかった……。