「でも…」
言いかけて、やめる。
時間を置いてみるのも、
いいのかもしれない。
今まで"仮面夫婦"だったから、
少しの間、彼と向き合うのも
いいのかもしれない。
「もしまた旦那さんが手を出してきたら
すぐに俺に知らせて。
大丈夫、俺は八木の味方だよ」
酔いのせいか、少し赤らんだ顔で
にっこりと微笑まれる。
そんな顔されたら――…
頼っちゃうじゃない。
今でさえ、甘えているのに。
小泉先輩はズルイ。
優しくするだけしておいて、
しかし彼の目に映るのは
私じゃなくて奥様なんだもの。
会ったことはないけれど
一度奥様を見てみたいな…。
こんな"イイ男"を旦那にして
メロメロにさせちゃうだなんて…
「…はい、ありがとうございます」
その後、また違う話をして
メアドを交換し、旦那に何かされたら
すぐメールしてくるように念を押されて
駅の改札で別れた。

