石村君があたしに気があるってこと、随分前から知っていた。
知っていたから、寝た。

ただそれだけのことなのに、美鶴はマスカラ混じりの黒い涙を両目いっぱいに浮かべながら、ついでに鼻水を垂らしながら、それはそれはお粗末な顔であたしを責めた。
何で彼なのよ、とか、私達が付き合っていること知ってたでしょう?とか、あげく、淫乱、とか。

あたしはそれを妙に冷めた気持ちで眺めている。
何で彼なのかって?セックスしたかったし、彼もそれを望んだからよ、なんて言ったら彼女はどんな顔をするだろうか。