直樹くんに向けて言ったことを利用されるなんて。
先輩は偉いって、自分で言っちゃったから今さら言い訳できないし。
こういうところで頭がキレるのが、黎緒先輩で。
やっぱり侮れない相手。
横目に木仲さんたちを見ると、さっきと状況は変わってない。
木仲さんは泣き続けるし、直樹くんは慰めてる。
この2人には、これからいいムードをつくってほしいけど。
こっちは絶対ダメ。
黎緒先輩の巧みな計略の罠に足を踏み入れようものなら、身を投げ捨てるも同然。
甘い言葉や脅しに、耳を貸したら負け。
「ボクのゆゆに触るなーっ!!」
悩み焦り始めた束の間、ドンとあたしと黎緒先輩に衝撃が走る。
小さな何かが体当たりを繰り出してきたからだ。
「今すぐ離れて、ゆゆに近づかないで、触れないで、ボクのゆゆを返して」
言葉はすべて黎緒先輩に向けられてるはずなのに。
あたしまで圧倒されて無表情になってしまう。
ぜいぜい深く息をしながら、あたしたちを引き離そうと必死に手を伸ばす先方。
「ゆゆが汚れちゃうよぉ!」
いやいやいや、汚れないけれども。
とゆーか、汚されてたまるか。


