ついついキョトンとして隣ばかりを見ていると、いつの間にか黎緒先輩の腕の力が弱くなっていて。
今ならいける、蘭ゆずゆ!
これ以上、黎緒先輩に捕らえられていたら大変なことになるよ、たぶん。
隣では近々甘い雰囲気が訪れそうだし。
その雰囲気にあたしが促されたりなんかしたら、危ないもんね。
そうだよね?
だったら今しかチャンスはない。
相手の隙をついて、いざ逃走………ってぇぇえ!
「おっと、そうはさせないよ?」
「うっ……」
1度緩んだ力が、再度入れ直される。
「助けてもらった相手に“ありがとう”も言えないのかな?キミは」
あのー‥さっきの柔らかい声色は何処へ?
鋭く厳しい音吐が耳に入り込んでしまうのは、なぜでしょう。
誰か、空耳だと言ってくれ!
「あ.ありがとう、ございます」
「うん、いいコだね」
降り注ぐ優しい笑顔。
完全にあたし、黎緒先輩に扱われてる。
どうしよう。
「先輩は偉いって蘭さん言ったよね?
だったら、ちゃんと言うこと聞かないと…ね、」
あぁ、黎緒…先輩………その笑顔、怖いです。


