「先輩に向かって調子乗りすぎだよ」
「なら、そんなに先輩が偉いんですか」
「偉いよ?なんか文句ある?」
残念なことに、直樹くんを見上げて反論。
見下したいけど、身長のせいでそれは無理だ。
そこにまたイライラして、不満をぶつけようとした時
「や.やめてください!」
木仲さんが直樹くんをかばうように、あたしの目の前に現れた。
「直樹の発言は私から謝ります。
だから蘭さん、落ち着いてください」
「でも木仲さ───」
「花梨やめろ、おまえは引っ込んでろ」
それぞれの声が交差して、もはや収拾がつかなくなった現状。
ただただ怒り爆発モード全開のあたしには、他者の声なんて聞こえてこない。
不意に鳴り響いた警笛以外は。
「危ないっ」
一瞬、頭が真っ白になった。
驚いて体が動かなくて。
「───っ!」
次の瞬間、ものすごい力で背後から回された腕に引き寄せられて。
かと思えば、さっき警笛と同時に目にした自動車が真っ正面を横切る。
どうやらあたしは、あと1歩間違えたら車に跳ねられていたらしい。


