腕を掴むヤツを睨みつけて。
「あれ、ひょっとして怒ってる?」
なのに、睨んだあたしを見ても対応は変わらない。
いつも通りの口調。
「奏斗……なんでいんの?」
「なんでって、ゆゆと一緒に帰ろっかなーって」
歯を見せて説明されると同時、あたしは目をそらして足を動かし始める。
一緒に帰ろうってことは、ずっと待っててくれたってことだよね?
相変わらず腕は掴んだまま、歩を合わせてくる奏斗。
一緒に帰るとか、珍しいわけでもないんだけど。
「どっか寄ってくー?
なら、オレ付き合うけど」
バカだな、こいつ。
「別に待ってなくて良かったのに。
待ってんの退屈じゃなかった?」
「あ、いや全然。
おかげで可愛いコのメアド手に入れちゃったし。
校門は意外といい場所だよな、うん」
あら、そうでしたか。
待ち時間をも、女を口説くことに費やすとは。
奏斗の場合、そこに生き甲斐があるから当たり前なのか?
「どーでもいいけど、ありがと」


