牡丹のお母様に、凪兎とお礼を告げて。
妙な雰囲気に包まれて、家を出たあたしたち。
結局、最後まで奏斗は目を合わせてくれなかった。
両方を手に入れようとするのは、やっぱり大変なことなのかな。
帰り際、振り返って見た明かりのついている牡丹の家は……
どこか切なくて、寂しい。
涼しげな風に当たりながら、夏の夜道を並んで歩く。
静寂を隠す、虫の鳴き声が奏でた音色。
合わせてくれる歩幅。
足元を向く視線。
「なんか、変な感じだね。
前も一緒に歩いてたのに」
今は、何を話せばいいか思いつかないし。
上手く笑えないし。
「もう怪我は大丈夫なの?」
自分から話題を持ちかけたくせに、無視されたらと思うと怖い。
「うん……けど、盗み聞きみたいになっちゃって悪かったよ」
申し訳なさそうに言われて、はっとする。
あ、寝たふりってことは、あたしの独り言も全部……
「ち.違うの、あれは、その、勢い余ってっていうか」
恥ずかしくなって、混乱しながら入れる訂正。
今さら遅いのは目に見えてるんだけど。


