「凪兎なら、まだ寝てたよ」
それだけ返事をして、逃げるように風音のほうを向く。
「あのさ、風音……亜蓮は?」
話さなきゃと思っていたのに、姿がまったく見当たらないから疑問だった。
風音に聞くのは抵抗あったけど、近くに他にみんないないし。
「亜蓮先輩?
……なんで?」
案の定、持っていたフォークをお皿に思いきり振り落としながら聞き返されちゃったけど。
「あのね、大事な話があるの。
だから───」
「亜蓮なら外に出てるよ」
途中で、うしろから別の声。
たまたま通りかかったのか知らないけど、黎緒先輩が指を差して教えてくれる。
「ありがとうございます」
帰っちゃう前に話をしておきたかったから、急いで立ち上がって。
「えー、ゆゆ行っちゃうの?」
不満げに引き止める風音に謝って、あたしは縁側から中庭へと足を運ばせた。
できるだけ、普通に話そう。
できるだけ、普通に。
暗唱を繰り返して、ひょこっと亜蓮の隣に何気なく寄ってみる。
亜蓮は一瞬こっちを見たけど、空を見上げると無言のまま。
あたしも同じように空を見上げて、口を開いた。
「あたしさ、亜蓮と別れてから初めて好きな人できたよ」


