もしも、あたしが亜蓮に恋をしていなければ何も起こらなかったのかな。
刻印を持つことも、仲間に出会うことも。
差し込む月の光に照らされたキミに、出会うことさえできなかったかもしれない。
「ゆずちゃん、夕飯の支度できたよー」
開けられた襖から漏れた光。
牡丹のお母様が顔を覗かせる。
みんなの手当てをするのに、いったん場所を移動することになって。
毎度ながらお世話になっている牡丹の家へ。
お母様の心遣いで、夕飯をご馳走になってから帰宅することになった。
本当、毎回毎回すみません。
お母様は、あたしと目が合うと柔らかい笑顔を見せて
「ゆずちゃん、敵の敵は味方なんだよ」
一言残すと、また襖を閉めた。
薄暗いこの部屋には、凪兎と2人きり。
ずっと眠ったまま、目を開けてくれない。
怪我、牡丹はそんなにヒドくないって言ってたけど実際はもっと………
ダメダメ、良からぬ想像ばかりが脳裏を過ぎっちゃう。
大丈夫だよね、うん。
頬を両手でパチンと叩いて、立ち上がる。
凪兎、また来るね。
亜蓮と、ちゃんと話をしてから。
心の中で話しかけて、あたしは部屋を後にした。


