「あーーーっ!!
黎緒先輩、今ゆゆのこと汚した!」
火照った頬を両手で挟み、黎緒先輩を見上げる。
と、引き続き放心状態のあたしの耳元で囁くセリフは。
「久しぶりだから、いじめたくなった」
なにこれ冷たい口調じゃない。
余計に混乱するくらい、優しくて。
「そういうのアリなの、ねぇ!?
ならボクもする」
泣きそうな声で叫びながら駆け寄ってきた風音があたしの腕を掴んで引き寄せる。
次の瞬間、風音の唇が一瞬あたしの頬に触れた。
なななななな.なに!?
脳内絶賛大パニック中。
「コホン、風音さん、手当てを手伝ってください。
梨城先輩、調子に乗らないでください。
地位乱用はセクハラですよ」
間に割って入った牡丹が、盛大なため息を零す。
それから耳元で、伝えられたこと。
「天南先輩と、後日しっかりお話なさってくださいね」
あまりの威圧感に、頷いたあたしの顔は引きつっていただろう。
「ねぇ牡丹、凪兎の怪我は」
「大丈夫です、そこまでヒドくありませんから」
今はただ、ほっとできただけで幸せなの。
あたしね、やっぱり……自分を追いかけてくれる人より、突き放されても好きでいられる人を選びたい。


