貶されていることはわかる。
だけど、そんな言葉も気にせずに倒れた人のそばまで駆け寄った。
凪兎も、亜蓮も、2人とも怪我をして。
眠っているように目を閉ざしたまま、繰り返される呼吸。
「……ヒドい」
零れた声に、春海はおかしそうに笑い出す。
「捨てられた上に、裏切られて、それでも好きだなんて本当に可哀想ね」
悔しくて、悔しくて。
恨みだけが、感情を支配して。
今にも壊れそうなあたしに、さらに聞きたくない言葉が告げられる。
「あなた、いい加減気づいたらどうなの?
騙されてるって」
もう無理だよ。
我慢できない。
泣くのも、怒るのも、恨みも憎しみも全部。
あたしが自分で刻んだ、蓮花のせいだ。
怒りに混じって静かに流れ落ちる涙。
近くに転がったガラスの破片で傷つければ、刻印は消える?
限界が近づいて、凶器に触れた瞬間だった。
鼓膜を揺らした、水の流れる大きな音。
反応して顔をあげると、水を頭からかぶった春海の姿。
「騙されてることに気づかなきゃいけないのは、キミじゃないかな」
バケツを片手に呆れた表情の黎緒先輩がいた。


