呼吸が苦しそうだ。
このまま、放っておくわけにもいかないし。
運ぶかどうか迷っていると、背後に感じた人の気配。
動作を止めて、身体を固める。
「ランちゃん、久しぶりだね〜?
脱走したのは、いつだったかな?」
この声……ケン。
深く息を吸って立ち上がると、震える足。
ダメだ、怖い。
怖くないって思おうとしても、震えが止まらない。
「どんだけいい人なわけよ?
自分の敵を守ろうとするなんざぁ、今まで聞いたことねーなー?」
どんどん迫ってくる足音に、後退りたくても動けなくて。
ほら、あたし、しっかりしろってば。
アロエなんて、ちっとも怖くないじゃない。
「ははっ、なに、震えちゃってんの?」
言い聞かせても、近づく相手に恐怖心から呼吸が荒くなる。
来ないで、やめて。
「強気なくせに、可愛いとこもあるんじゃん」
伸びてくる手に、強く瞑った目。
「可哀想に、相手が敵じゃあ好きになるだけ無駄だぜ〜?」
………凪兎。
手を握りしめて、下唇を噛む。
何も知らないヤツに、無駄だなんて言ってほしくないのに。


