しばらく続く沈黙。
最初に音を立てたのは、他でもないあたしだ。
「黎緒先輩っ…!」
このメールの送り先のアドレスを、あたしは知っている。
「牡丹、このメール、あたしのケータイに転送して」
急いでケータイを取り出して、牡丹に作業を頼む。
「どうするの、ゆゆ」
曇った表情の風音には、慰めるように微笑みかけて。
「こんな時間だし、間に合わないかもしれないけど……」
行かなきゃ。
「ゆずゆちゃん、転送しましたけど」
「ありがと牡丹、ごめん風音、行ってくる!」
叫ぶように言い捨てて、風音の腕からするりと抜け出した。
追ってくる声には、悪いけど無視。
夕暮れの校舎をひらすら駆け抜ける。
途中、廊下で見慣れた顔が2つ。
「ゆゆ、慌ててどうし───」
「奏斗ごめん、邪魔!」
「うおっ!?」
押し飛ばすようにして道をつくり、動かし続ける足。
立ち止まって奏斗と寿羅に説明してる時間がない。
メールの本文には、紅珠沙が闇紫苑を攻める日が書いてあった。
このメールが送信された日時は、数週間前。
送り先のアドレスは、黎緒先輩のケータイ。
そして、添付された地図。
紅珠沙が、闇紫苑を攻めるのは……今日。
なんで、もっと早く気づかなかったんだろう。


