どんどん渋い表情に変化するあたしたちの目の前に、突如現れたもう1人。
肩にかけていたカバンを自分の席に置くと、優しく微笑みながら近寄ってきて。
「牡丹先輩、ゆゆが悩んでるの。
ボクの分まで助けてあげて?」
牡丹の両手を、風音の両手が包み込む。
久々に出したな、こいつ。
“必殺キラキラ瞳で惚れさせちゃうぞ攻撃”。
確か技名はそれであっていたはず。
だがな、その技は牡丹には通用しないぞ。
「ゆずゆちゃんのことになると、本当に必死ですよね。
それでゆずゆちゃん、どうなさいました?」
なぜなら、牡丹には華麗なるスルーという無意識に使う技があるから。
奏斗がよく食らってたなぁ。
「あのさ、パソコンのパスワードがわかんないんだけど牡丹知らない?」
その場から横にずれて、牡丹に画面を見えるようにする。
お願いです、ヒントください女神様!
「……パスワード?」
向けられた画面と睨めっこをする牡丹。
それから、思い出したようにパチンと両手を叩いて鳴らす。
「以前、パスワードを変えられていた時に、大切な人が生まれた日にしたとおっしゃっていましたよ」
上品な笑顔で告げられ、正反対にあたしの眉間に刻まれていくシワ。
「ねね、牡丹先輩?
黎緒先輩の大切な人ってだぁれ?」
「さぁ……誰でしょうね?」
は?大切な人?
………春海?
って、誕生日なんか知ってるわけないじゃん、黎緒先輩のバカ!


