外に逃げて正解だったかも。
中だったら間違いなく道に迷って、鉢合わせた誰かに捕まってただろうし。
今度こそ、大きな檻から出られるんだ。
安心した瞬間、目の前に現れた細い影。
「簡単に逃げられると思ったら、大間違いよ」
「春海…!」
やむなく足を止め、戦闘態勢に突入する。
前にいる寿羅が、あたしを庇うように繋いでいたほうの片手を広げて。
「あなたには興味ないの。
刻印を持っていないじゃない」
ゆっくり近づいてくる春海に、警戒する。
「だから退いてくれない?
私はあなたが守ってる、そのコがほしいのよ」
このままじゃ、寿羅が危ない。
こうやって時間を稼がれてる間に、他のヤツらが来ちゃう。
春海だけなら突破も不可能じゃないけど、人数が増えれば比例して減る勝ち目。
どうにかしなきゃ。
焦りが感情を支配する。
緊張感が、あたしたちを包み込んだ。
「闇紫苑を倒すのに協力する。
それって、そんなに都合の悪い話かしら?」
交渉を持ちかけつつ、さらにじわじわと接近。
逃げても怒らないのに、寿羅はあたしの前から動こうとはしない。
「あなたたち、勘違いしてるから教えてあげるけど」
寿羅、お願いだから逃げてよ。
「黒も紫も紅も、最終的にはすべて敵同士なのよ?」


