「…ってー‥…」
支えきれずに、押し倒された寿羅。
「ご.ごめんっ」
慌てて、その上から退く。
謝っても謝りきれない。
とりあえずは、お互い怪我がなくて良かったよね。
安堵のため息を零したいところだけど、そんな余裕はないみたいだ。
なんせ、逃げ出したのがバレちゃったんだから。
「ランちゃーん、脱走しちゃダメじゃんか。
飼い犬は飼い犬らしく、いいコにしてないとなぁ?」
ついさっき、あたしが飛び降りた窓からケンが不機嫌そうに顔を覗かせる。
あたしは、ヤツの飼い犬になんかなった覚えないぞ。
そもそもペット扱いとか、されたくない。
怒りを露わにキッと睨みつけ、そばにいる寿羅のシャツを掴む。
「逃げるぞ」
こっちを振り返ると、重ねられた手。
「逃げるって、どこに?」
「黙ってついて来い、バカ」
バカは余計だよ!
そう言い返そうとした時にはもう、手を引っ張られて走り出していた。
追いかけてくるケンの声に、耳を貸す暇なんてない。
夢中で寿羅について行って。
やっとのことで、目の前に出口が顔を出す。
息はとっくに切れていた。
ひょっとして、この建物けっこう大きい?
外見からすると、あたしの家の倍はある気がするんだけど。


