そ.そりゃあ、そうだけどさっ。
いかにも正論を、寿羅に言われたから尚更腹が立つ。
睨みつけるように視線を送ると、呆れた表情をしてから両手を広げて。
「受け止めてやるから」
「え?」
怒りも忘れるくらい、かけられた言葉にきょとんとしてしまった。
答えられず、動けない。
迷っていると、突然扉の向こう側から騒がしい足音。
音に振り返って改めて、自分の置かれている立場に気づいた。
さっき叫んだせいで、様子がおかしいと察したのか。
あたしは捕らわれた身。
チャンスを逃せば、二度と出られないかもしれない。
だけど、寿羅は?
「あたしのことはいいから、早く逃げて!」
巻き込んで、いいの?
いいわけないよ。
窓の外へと警告を促す。
それでも微動だにせず、まだ両手を広げたまま。
「ふざけんじゃねー!
そういう気遣いが、いっちばん迷惑なんだよ」
ちょっとだけ、イラついた言い方で返ってきた文句。
「ちゃんと受け止めてやるから、そっから落ちろ!」
敵はすぐそこまで迫ってきている。
再びの寿羅の声に、意を決して窓へと足を伸ばした。
扉が開かれる寸前、目をぎゅっと瞑って───
「…うおっ!」
「きゃっ!」
飛び立ったあたしは、やっぱり鳥にはなれないらしい。


