あたしが信じなかったら、ここに信頼関係なんて成立しない。
警戒して話したって、そこに絆は育たない。
生み出したいなら、自分から行動するしかない。
だから、待つよ。
再び絡む視線。
なんだか悔しくて、意地でも目を逸らさなかった。
しばらくして聞こえたのは、ため息で。
「そういえば、蘭さんの誕生日はいつだっけ?」
先に目を伏せた黎緒先輩が、ふいに尋ねる。
「あたしの誕生日?」
意図を探るように聞き返してみても、何も答えはもらえない。
「7月16日ですけど」
あきらめて告げると、何事もなかったかのように相手はあたしから離れていった。
「誕生日が、どうかしたんですか…?」
「さぁ?」
笑顔に誤魔化され、それ以上聞けなくなる。
何を調べようとしてるの?
それとも、何かを伝えようとしてるの?
「もし逃げたいんだったら、窓から飛び降りてみれば?」
そう言い残して、この檻の中を出て行く。
呼び止めることは、できない。
呼び止めた後で、何を言えばいいかわからないから。
扉が閉まってからも、しばらく動けずに黎緒先輩の残像を見た。
本当に、黎緒先輩は紅珠沙側についたの?
あたしたち黒蓮華も、亜蓮がいる闇紫苑も、敵に回すことになるのに。


