それでも、逃げきることはできなくて。
「仲間じゃないの?
裏切ったの?」
あんなに優しかったのに。
「全部、嘘だったの?」
ヒドいことを言っても、いつだって最後は優しかった。
背中を押してくれた。
ぬくもりをくれた。
なのに、どうして急に。
「裏切り者は、蘭さんじゃないかな」
「え……?」
座ったまま、ベッドの上を移動する。
はっとした時には、もう背中は壁について逃げ道を失い。
「仲間だと思ってるなら、逃げる必要ないよね?」
伸びてきた片手が、真っ黒い髪を拾った。
あの時──部室に遅刻して行ったあの日も、黎緒先輩はあたしの髪をすくって。
「……こんなの違う」
戸惑いながら、返事をしていた自分が懐かしい。
「こんなの、黎緒先輩じゃないです」
信じられなくて、信じたくなくて。
こんな短時間のうちに、対立する関係になるのには裏がある。
そう考えるのが、妥当だと思った。
「ひょっとして、黎緒先輩も学の催眠にかかって───」
「残念だけど、今までのは全部偽りだよ」


