疑問を投げかけるより早く、距離を縮めながら告げられた。
「学はね、催眠が使えるんだ。
前に本伊さんを襲った愛美ってコも、学に操られてたみたいだよ」
現実を見始めた頭で、必死に意味を考える。
ここに連れて来たのは、学。
そうか、さっきまでの暗い夢みたいな時間は催眠で。
あたしは、夢を見せられてたの?
独りぼっちになってしまう、悲しい夢。
どこからが現実で、どこからが夢なのかわからない。
「ま、催眠も短時間らしいけど。
盗み聞きしてたみたいだね、ケンの話」
黎緒先輩がこの場にいて、紅珠沙の話をしてる。
それが何を意味するのか。
「黎緒先輩は、あたしの敵なんですか?」
紅珠沙と、繋がりがあるっていうこと?
それとも、ただ理由もなくここにいるの?
春海とは、どういう関係?
「さぁ?
でも、蘭さんを助ける気がないのは確かだよ」
口元は笑っていても、瞳が笑うことはない。
部室を覗いた時に、一致した鋭い瞳と同じ。
動きを止めず迫る相手に、あたしは警戒を隠せない。
もう黎緒先輩は、あたしの味方じゃないかもしれないから。
「来ないで」
強い言葉で制止する。


