記憶を掘り返そうとすると、一部分が霧がかって。
忘れちゃいけない大切な部分だけが、もやもやとしている。
いつになったら、思い出せるんだろう。
このまま一生思い出せなかったら、どうなるんだろう。
考えれば考えるほど、不安だけが募っていく。
『もしもーし?』
黙ったままのあたしに、再び相手の声が届いた。
はっとして、慌てて背筋を伸ばす。
必死で会話を成り立たせようとしてたのに、あたしってば
「はい、」
全然上手く喋れてないじゃない。
『どうかし……ましたか?』
「いえ、なんでもないです」
何気なく答えたのに。
この違和感は、どこから来るの?
「あの…敬語、やめませんか?」
よくわからないけど、すごく気持ちが悪い。
敬語を使うような関係じゃ、ないと思うんだ。
もっと、近くて。
それでいて、遠い距離。
『……うん、そうだね』
思い出したいのに、思い出せない。
もどかしくて、しょうがない。
『ねぇ、質問していい?』
「なに……?」
『なんで、俺に電話したの?』
………なんで。


