「は.放してっ」
抵抗するが、見事にその男によって電柱から放り出される。
ケータイを握りしめたまま、振り返ったケンが目を丸くした。
「うおっ、ランちゃんじゃーん。
よっ、元気してた?」
なんて軽いヤツ。
あたしが敵だって恐れられてない。
ってか、何なのこいつ!
「放せっての!
触んじゃねぇよコノヤロー」
さっきから、ずっとあたしの両腕を掴んでる。
この人誰よ?
「相変わらず口悪いなぁ、ランちゃん」
相変わらずアロエのてめぇに言われたくないわ。
「女性として、どうかと思いますね」
「だから、あんた誰」
ケンと話してるんだから、紅珠沙って考えるのが妥当か。
質問すると、すんなりとあたしを解放して。
「これで、わかりますよね」
見せられた右腕に刻まれた、真っ赤な曼珠沙華。
「紅珠沙………」
やっぱり、敵に変わりはなかったんだ。
「名前はガク。
学ぶと書いて、ガク」
「あ、そう」
素っ気なく、冷たく返事。
相手はそんなの、気にしてる感じじゃないけど。
今目の前には、ケンと学。
そんでもって、自由になっている両手。
チャンスがあるとしたら、今しかない。
見えないように、ケータイを鞄から取り出して後ろ手で開く。
キーなんて、見なくても電話くらいかけられるんだから。


