「黎緒先輩が……黎緒…せんぱ…っ」
「わかった、わかったから。
落ち着いてから喋れ」
呼吸が乱れて、宥められて。
あまりにも衝撃が大きすぎたの。
だんだん、咽び泣くしかできなくなってくる。
「蘭?」
浮かぶのは、疑問ばっかり。
思い出そうとすれば、一致した黎緒先輩の瞳が記憶から消えない。
見据えた暗い瞳。
なのに、凶器のように鋭くて。
突き抜かれたように、苦しい。
捕まったらもう逃げられない、まるで蜘蛛の巣。
ただただ怖くて、仕方なかったから。
困った顔をする相手に助けを求めるよう、衝動的に手を伸ばした。
「寿羅っ………」
勢いよく抱きつくと、少しよろけてから重心を整える。
あくまでも腕を回しているのは、あたしだけ。
「蘭……っおい、んなに力入れんじゃねー…って、だっ、だから」
焦ってる声が聞こえても、どうしても離れたくない。
少しだけ背の高い寿羅の肩に額をくっつけて、さらに腕に力を入れる。
「なっ……バカっ、それ以上くっつくな」
「ごめん!今だけだから!」
いい加減な言い訳をして、人のぬくもりを望む。
どうしたらいいかなんて、すぐに答えられるはずない。
だったらせめて、独りじゃないことを教えて。


