だから、連れられていく牡丹を見て実感した。
あたしは、独りぼっちが苦手なんだなって。
教室を出る直前、こっちを振り返ろうとした牡丹を後輩が止める。
動きを阻止したって言うよりも、そうならざるを得なかった。
「そういえば本伊先輩、気になったんですけど」
思い出したように、告げられた出来事。
「梨城先輩って、彼女さんいたんですね。
びっくりしちゃいました」
場の空気が、ピタッと固まった。
同時に、驚いてる牡丹と絡む視線。
寿羅を見れば、言葉ではなく首を捻って返事をされて。
いったい何の話だろうか。
黎緒先輩に彼女?
見間違いじゃなくて?
「あ、いけない、先輩急ぎましょう」
半ば強引に引っ張られていく牡丹が、物言いたげに視線を投げかけてくる。
教室を出るギリギリになって、慌てた声。
「寿羅さん、ゆずゆちゃんを頼みます」
賑やかな後輩さん方が退出し、牡丹もいなくなってしまった。
………ん?あれ?
さっき、あたしのこと頼んでなかった?
しかも寿羅に。
謎の依頼を残して去った牡丹を、今ものすごく大声を出して呼び戻したい。
「ねぇ寿羅、意味わかった?」
「いや、わかんねー」
「ですよね……」


