黒板には数枚、連絡事項のプリントが磁石で貼り付けられてる。
まだ白いチョークの跡が、綺麗に消えきっていない状態。
いつもは、もっと綺麗なのに。
教室掃除は出席番号の先頭から何人かが担当だ。
あたしは、いつも箒をやってて。
黒板掃除は確か、毎回率先して奏斗がやってた。
そんなことを考えれば、黒板消しを両手に持って騒いでる姿が頭に浮かぶ。
しょっちゅう制服を真っ白にしてさ。
んっとにバカだな、奏斗って。
ガタンと音を立てて寿羅が向かいの机から降りると
「本伊先輩っ!」
突如教室の入り口に、息を切らせた後輩の女の子たちが。
足音を鳴らして、あたしたち──詳しくは牡丹の目の前へ。
「部活来てください!
先輩がいないと、誰もやる気出さなくって」
実に、元気いっぱいな大声だ。
だけど反対に表情は困っているらしく曇りがち。
それは、どうも牡丹も同じみたい。
「今日はラブの活動がありますので……」
「そんなこと言わないで、お願いしますよ〜」
断ろうとしてるけど、押しに負けてるぞ。
話を聞いたところ、この女の子たちは弓道部みたいだね。
「ちょっとだけでいいですから〜。
先輩探すのにどれだけ苦労したか、わかってます?」


