語られたのは、そこまで。
愛美ちゃんは目をこすりながら、また首を傾げて。
「なんで泣いてるんだろ」
自分の状態を不思議に思っているみたいだった。
抜けた部分の記憶は、ちょうど牡丹を誘拐している最中。
これって、【操られてた】って考えるのが妥当なの?
でもそんな手口で牡丹を傷つけようだなんて、いったい誰が───
「数日前に会った変な人って、どんな人だったか覚えてる?」
あたしが黙って聞いていると、今まで無言だった黎緒先輩が口を開いた。
「え?あ、えっと、」
手を顎に当てて、愛美ちゃんは続ける。
「男の人で、背が高くて………花!
右腕に花みたいな刺青?があった気がする」
刺青?
湯飲みを持った寿羅と爆睡中の風音以外、みんなが一斉に愛美ちゃんを見る。
単語に反応したんだ。
「その刺青、何色だったかわかる?」
珍しく慌てた様子の黎緒先輩。
「さぁー?
その変な人に捕まったの夜だったし、色まではちょっと」
対して落ち着いている愛美ちゃん。
誰だ、牡丹を狙ったヤツは。
確率として高いのは、紅珠沙のメンバー?


