「ゆずちゃん、どうしちゃったのー?
あ、さては黎緒くんに見とれてたなーっ」
違いますけども。
面倒だから、今はそういうことにしといてください。
黎緒先輩を敵に回したら、絶対あとで殺されるから。
「あ、お母様、これ寿羅」
あははは、と下手くそな笑顔を一生懸命つくって、口から出たのはそんなこと。
奏斗の横で和菓子を口に運んでいたヤツは、向けられた視線に気づくと手を止めた。
「じゅら?
変わった名前ねー。
私ジュリアっていうの。
頭文字一緒だね、やったぁ」
頭文字って………。
しかもジュリアっていうんだ。
知らなかったよ、あたし。
「こう書くのよー」
そう言って寿羅へと渡ったお母様の名刺。
それを、あたしと奏斗で覗き込む。
「珠里亜……人形みたいな名前だね」
あたしの中では、子供が牡丹だから親も花の名前って想像だったんだけど。
「おっ、牡丹ママ聞いて驚け。
寿羅の苗字が松永だからイニシャルも一緒だぜ」
「本当ーっ?
わぁー、嬉しい」
おいそこ、発見に喜んでハイタッチをするな。
寿羅の表情が引きつってきてることに、ちょっとは気づいてやれ。
「すみません……寿羅さん」
牡丹が不憫じゃないか。


