無駄に疲れた。
しばらくして部室に着いた頃には、なぜかみんなしてヘトヘトに。
無事に来れたことが、まるで奇跡だ。
「目の前の2人見てたら目が疲れたぜー‥」
「あたしも」
未だ中途半端な距離を保ちながら、あたしは奏斗と部室へ入る。
「ゆゆーっ」
と、すでに部室にいた風音が元気よく飛びついて来た。
今来られても困る。
ヤバい、退ける気力すら残ってない。
「あれ、松永くんずいぶん真っ赤になってるね」
いつもながら窓辺に立って、夕陽に照らされた黎緒先輩は静かな笑みを見せた。
「だだだ.誰が真っ赤だ!
ちげーよ、全然なってねーよ」
寿羅、そんな思いっきり否定したら肯定してるのと同じだよ。
しかも誤魔化してるのがバレバレ。
「ま、キミが真っ赤だろうと真っ青だろうとかまわないんだけどね」
黎緒先輩、あなた魔王をいったん蔑ろにして本当は閻魔様なんでしょ。
いつかあたしたちを地獄に誘(いざな)うつもりでしょ。
「あと本伊さん、気づいてないだろうけど松永くんの腕に胸が当たってるよ」
「なっ………」
「あ、すみません寿羅さ……あの、寿羅さん?」


