放課後の廊下。
人は少ない。
引きずってる相手は寿羅。
よって安全。
「なぁゆゆ、相手が寿羅だからって油断してね?」
心中を見抜いた奏斗は、すかさず指摘を続ける。
「確かに風音と黎緒先輩に比べりゃマシだけど、そいつ転校生ってだけで割と注目浴びてて───」
「ゆずゆちゃん、これから部室行きますか?」
説明を遮り、突然とある教室から目の前に飛び出してきたのは牡丹。
あまりに突発的で、無意識に急ブレーキをかけた。
「牡丹、いきなり飛び出したら危ないでしょ!
轢きそうになっちゃったじゃん」
つい口を出たのは怒鳴り声。
ここが車両の多い道路じゃなくて本当に良かった。
「すみません、交差点では気をつけます」
「交差点以外でも気をつけろ!」
牡丹と話してると、小さい子どもを心配する母親の気持ちがわかる気がする。
お母さんって大変よね。
「それであの、部室には行きま───」
「行く行く」
「では、ご一緒させていただきますね」
「…だろうね」
何度目かになるため息を零して、牡丹を見ていれば
「ん?」
あたしから少し外れた、どこか一点に焦点をじっと当てている。


