───翌日。
「はぁー‥」
「どうかした、ゆゆ。
ため息つくと幸せが逃げちゃうぜ?
ま、オレが幸せにしてやるから心配いらな──」
「いい加減離れろ、蘭……」
「蘭じゃなくて、ゆずゆって呼んで?」
机に突っ伏していた顔を上げて、片手でガッチリ捕まえた寿羅を見上げる。
もちろん降ってくるのはご機嫌斜めな文句ばかり。
隣の机の上に座った奏斗は、相変わらず気持ち悪いことを口走ってるし。
奏斗にあたしを幸せにできる力があるとは思えない。
むしろ将来が心配すぎる。
そんで、寿羅にこそ抗議したい。
あたしは決して離れなきゃいけないほど、あんたに密着してないわ。
ただ“幸運になれるゆずゆちゃんの手”という名の手錠をかけているだけで。
手錠をかけられた寿羅は今日1日ハッピーに過ごせるんだよ。
光栄に思え。
「絶対に嫌だ。
俺は帰る、さっさと放せ」
「寿羅くん冷たーい」
口を尖らせて言ってみても、目すら合わせてくれない。
こうやって寿羅を捕まえるのには理由があるからなんだけど。


