3人が悩み始める頃、あたしは胸元にそっと手を置き目を閉じる。
高校2年生に進級する直前の春休みだった。
胸元に刻んだ黒い蓮花。
刻印を初めに持ったのは、あたしじゃない。
あたしは黒蓮華の存在さえ知らなかったんだから。
最初に持っていたのは
「ひょっとして、グループ内でトラブルでもあったんでしょうか」
不安げな表情の牡丹と
「いや、紅珠沙が仲間割れなんて無駄なことしないと思うけど」
落ち着いて話す黎緒先輩。
刻印を持つ覚悟を決めたのには、それぞれに事情や想いがあったからだ。
「この文章を信じるなら【紫は味方にはなれない】ってのは」
奏斗がそこまで言うと、なぜか近くの声が消える。
ほんのわずかに離れた場所での、風音と寿羅の言い争いだけが異様に大きかった。
そっと閉じていた目を開ければ、3人がこっちを見ていて。
うん、わかってる。
ちゃんと、わかってるよ。
紫は、あたしたちの味方じゃない。
「紫は──闇紫苑は、あたしたちの敵」
初めからわかってたのに。
いざ現実になると悲しいと思ってしまうのは、なぜだろう。


