もう、見てられない。


胸が苦しかった。


私はその場から、一刻も早く立ち去りたかった。


だけど、足が動かなかった。


でも、翔くんの言葉で、足が勝手に動く。

「早く、出ていけよ。」


―ダッ

私は、勢いよく、翔くん家を飛び出した。


そして、翔くん家の前で
力が抜けた様に、座り込んだ。


ねぇ、何で知らないの?
私の名前…忘れちゃった??

そんな訳ないよね?

ついこの間まで、一緒に、遊んでたじゃん。


名前ぐらい、出してほしかったよ。


私だって、名前があるんだよ??


黒木 那奈(クロキ ナナ)って言う名前が。