君は覚えているかな。

私に渡した赤色リップと

あの言葉を。



全ての始まりはあの日だった。

君を好きになったあの日。

そして君と別れたあの日…。



−…


「そんな生意気な事言うならアンタの大切なもんとるから!!ってゆか〜もうとっちゃってるからぁ♪」


耳に響く高い笑い声をあげながら、私の赤色リップを天井にあげる。


「や…やめ…て…。」

「あ?聞こえないんだけど?」


−カンッ


「あ…っ」


キャップが取れて、綺麗に輝く赤色が見える。


「はぁ、つまんないの、帰ろぉ〜?」

「マジ日向つまんないわ〜」


ざわざわと文句を言いながら教室を出ていくいじめっ子たち。


「また…キャップかけたよ…。」


このリップ、投げられたのは何回目だろう。
投げられすぎてキャップがいっぱいかけてる。

使わないなら捨てたらいいって、よく言われるけど、私の唯一の希望で、唯一の宝物だから、

捨てられるわけない


君から貰った物なんか。


私こと、佐々木日向は今年、高校生になったばかり。
そしてついでにイジメられてる。

昔から、ずっと。

理由なんて知らないんだけど。


まあ、要するに、私はいじめられっ子。


周りからは、慣れたように見えるらしいけど、心では慣れてなんかない。

涙だって、つらすぎて出ない。

学校だって、行きたくない。

けど、何があっても行かなきゃいけないの。君と、約束したから。


強くなるって…


そんな約束、果たせてないんだけどね。

それ以前に、君がいないから−…


−カチャッ


「ただいま…」

「おかえり日向。」


お母さんがスーツ姿で迎える。


「ちょっと、日向!どうしたの制服汚して。」

「なんでもないから。」

「ちょっと、日向?!」


お母さんは私の事なんて考えたことなんかないのに、いつもいつも私を責める。

イジメにあってるって、こんだけ一緒にいたら分かるのに分かってくれない。


いつも仕事…仕事…。


ねぇ君

私の居場所を教えて?