「昨夜、運転していたら君がいきなり飛び出して来たからびっくりしたよ!君もそのときのショックで気を失って倒れてしまったようだけどね。君の家がわからなかったから僕はそのままこの部屋に連れてきたんだ。でも何も怪我してなくてよかった。」
男は笑顔で言ったことに、美香は小さな声で呟いた。
「そのままひき殺せばよかったのに。」
それを聞いて男は
「え?」
と聞き返そうとした。
「…この服も?」
美香は初めて男の目を見て話をした。
「服?ああ。…そのとき雨で君がびしょ濡れだったから君が風邪ひくと思って…。でも、君を着替えさせるとき僕は目をつむっていたから、何も見てないよ。ほんとだよ!」
男は顔を赤らめて動揺を隠しきれていな様子だった。
そんなに一生懸命に弁解している男の姿を見て、美香は初めて笑顔を見せた。
美香はこの人なら自分の裸くらい見られても構わないなんて少し老成たことを考えた。
「やっと笑ったね。よかった。」
男は美香がとりあえず無事でいることに安堵した。
美香はそんな男の目を見てどこか懐かしさを感じた。
スープを胃に流し込む。
スープのせいなのか何なのか彼女にはわからなかったが、美香の胸に温かいものが一瞬だけ満ちたような気がした。