いや、あった。




これは、青い…絵?




海の絵だった。





それも非常に穏やかな。

太陽の光が毛布のように優しく海を包み、その生命力を一身に受け、堂々と、けれども底知れぬ深さある存在感を醸し出していた海の姿が描かれていた。






底知れぬ深い青。









そのとき、部屋の「白」という視覚の情報以外に、どこかで聞き覚えのある音が美香には聞こえた。





波だ。






どこから聞こえたのかと思い隣の部屋のテラスへ。




太陽の光が寝起きの美香には一瞬眩しかったが、そこに見えたのは紛れもなくあの絵の世界だった。




何十秒かわからない。


美香はしばらくこの世界の住人のようにその場にずっと立ちつくしていた。



「目が覚めたみたいだね。」



美香は驚いて振り向く。