加納欄の待ち合わせ シリーズ26

待ってたから!



大山先輩が来るの、待ってたから!!



だから、あそこでわざと、出て行ったんじゃん!



それなのに!



大山先輩は、あたしの表情を読み取って、頭をワシャワシャとなでた。


「遅くなって悪かったな。せっかく誘ったのに」


その言葉で、許してしまう自分がくやしい。



惚れた弱みって奴ですか……?



「だ、大丈夫ですよ!遅刻なんていつもの事じゃないですか!予定より1時間過ぎてるだけですよ。今からだって、充分に遊べますから。大山先輩行きますよ?」


あたしは、大山先輩を促した。


「何処に行くんだ?」



え?



何処って……。



「ま、またまたぁ」


「早く仕事しろ」


そう言って、大山先輩が手錠を投げてよこした。



なんで?



なんで??



「先輩?私、非番ですけ……ど?」


「そうだな」



そうだなって。



「お、大山先輩も、研修のレポート提出して、もぅ、お仕事、終わったんです、よね……?」


「あぁ」



よかったぁ。



「じゃあ、約束のデ〜」


トを言わせてもらえなかった。


「現場にいたお前が悪い。だから待ってろって言っただろうが、隠れてれば逃がしてやったのに」



そんなぁぁぁぁ。



待ってろ。って、そういう意味だったんですかぁぁぁ!!!!



久しぶりのデートは、一瞬にして崩れ去った。


散乱した後片付け、鑑識待ち、現場検証と、デートをしていたはずの時間は楽しくない時間にかわってしまった。



待ち合わせの時間はギリギリに入る、建物内で待ち合わせはしない。



今回得た教訓を心にしっかり刻み、鮎川さんの事情聴取に延々と付き合わされた。





−おわり−