クマさん、クマさん。



・・・・――――――――


「昨日はごめんね・・・いきなり、消えちゃって」


「・・・別にいいよ」


菜摘と横断歩道を歩いていた時だった。

1人の男とすれ違う時、男は"奪いにきたよ"と言って菜摘の手を掴んで去って行った。


俺はびっくりしすぎて信号が赤になって怒鳴られるまで、その場に立っていた。



「朋秋・・・あたし、朋秋が浮気してる事知ってたよ」


「・・・え」


「香水・・・会う度に女の香水ついてたから」


香水・・・移り香か。

そんな事1回も考えたことなかった。



「でも、それを怒ろうとは思わなかった・・・だって、あたしも浮気してたから」


菜摘は辛そうな顔をして言った。

でも、俺はそんな菜摘に気を使うほど余裕がなかった。


「菜摘が浮気・・・?」


「キスもしてない。抱かれた訳でもない。朋秋と付き合ってから、会ったことすらなかった」


それって・・・


「浮気じゃねーよ」


俺が浮気したと思うのはキスからだ。


だから菜摘は浮気なんてしてない。

そう思った。



でも、やっぱり人は1人1人違う。


だから、俺と菜摘の価値観も違う訳で・・・――――――



「違う・・・あたしは・・・"気持ち"が浮気してたの」


気持ち・・・?