月の輪

「う…ん?」
どうやら眠っていたようだ。もう完全に夜だ。ふと、月を見上げた。月明かりが煌々としている。美しいと思う反面ゾッとした。
「寒い。」
「大丈夫か?」
「!!!」
驚いて振り返ると、一人の少年がいた。少年といっても16、7歳だろうか。幼さが所々に見受けられる。
「貴様、何物だ!?なぜここにいる!?」
キョトンとした表情でこっちを見ている。
「あれ?聞いてねぇの?」
サァッと血の気が引いていくのがわかった。目の前の少年には巨大な角が生え、髪の色は銀色だ。そして、その瞳は…。
「大丈夫か?顔色悪いぞ?」
少年が顔を寄せてくる。
「月…。」
月の色だ。蜜柑の夢と同じ。
「月?あぁ、今日のはキレイだなっ。」
にっと笑った。そこから覗く歯に鋭い牙がある。
「妖、怪?」
「そうだけど、俺にはちゃんと榊って名前がある。」
初めて妖怪を目にして恐れおの退いた。