月の輪

"…しゅ"か。
可愛いな。そんなん言われちゃ理性が持たない。
「きゃっ!」
また…そんな可愛い声出して…。まったくもう、敵わないなぁ…。
「ふぁっ。」
俺の腕の中に居る千歳は、小さくて柔らかい。力一杯抱きしめても壊れたりしないだろうか…。
「んん。…っ!」
ん?千歳の様子がおかしい。
「~ップはっ。バカ!息をさせろ!!」
「おぉ…。悪い。」
そうか、息が出来てなかったのか。
「…。」
「ん?何?どうした?」
顔が紅い気がする。
「もっ…。」
「は?」
「もっと!!」
「わっ…。」
ちょっと、痛かった。下が畳で良かった~。
「押し倒すことないだろ~。」
「ちがっ違う!!お前が足を滑らせたんだろう!」
「まぁ、急に抱き着いてきたらなぁ。」
あっ、紅くなった。
もっとって"どっちの意味で"もっと?
「ねぇ…千歳…。」
「!?」
そんなにビクつかなくていいだろ!
「千歳は、もっと"何"がしたいの?」
「あ、いや、えと…。」
「もうちょい、深く聞こうか。…千歳は、もっと、キスがしたいの?それとも…もっと先のことがしたいの?」
「あ、あ、あ…。」
「俺は…。」
!誰か来る!!チッ、いいトコだったのに!
「榊?」
「誰か来た。」
「え?」
「おねぇちゃーんっ!!」
「み、蜜柑!?」
「おにぃちゃーんっ!!」
「俺も!?」


「心配かけていたんだな…。」
「ははっ。」
「笑い事ではないぞ!」
「そうなんだけど、俺さ、良かった。相手が千歳で。」
「何を急に…。」
「俺は、当主だ。だけど、部屋を持たなかった。」
「あ…。」
俺は、千歳の腕の中で眠っている蜜柑を見る。
「子供が多くて、部屋が足りなかったんだ。だから、相部屋にしたり、年長者が部屋を譲ったりね。」
「そんなに兄弟が多いのか?」
「いいや?俺の兄弟は弟が三人、妹が四人。そのうち双子が二組だ。」
「充分多いと思うが…。」
「まぁ、な。でも、親戚の子供が多くてな。」
「なぜ、子供だけなんだ?他にもその子等の親も居るだろう?」
「一族の中で子供が産まれたら、17歳になるまで本家で預かるんだ。だから、いつも子供だらけってわけ。」
「17歳?」
「身体が造り終わるんだ。要は、成人だな。」
「そうなのか…。」