「あっ、あそこだ。あの家。」
ウッソ。あれが家!?でか!!うちもそこそこ広いけど、これは広すぎだろぉ。
「降ろしてくれ。」
「はいはい。わかりましたよ、お姫様。」
千歳を地面に立たせる。立たせたなり走って行きやがった。…何か、敗北感。
「千歳様!?」
「ご無事でしたか!!よかった。みんな、千歳様がお帰りになったぞぉー!」
たちまち千歳のまわりに人だかりができる。本当にお姫様なんだ。
「蜜柑は起きているか。」
「いえ、まだ夢の中かと。」
「おねぇちゃああん!」
小さな子供が走ってくる。
「蜜柑、蜜柑!」
しっかりと抱き合う。姉妹ってことか。
「千歳。本当に千歳ですか?」
一人の老婆が青年に支えられて歩いてくる。体調が悪そうだ。
「大姥様。はい、千歳です。帰ってくることができました。まだ、調べなくてはならないことがあって…。」
「そんなことはいいのです。よかった、よかった。」
大姥様と言われた老婆が千歳と蜜柑って子供を包み込むように抱きしめる。
「チー、お帰りなさい。」
青年が親しげに千歳に話しかける。イラツク。
「ただいま、清太郎。」
千歳も親しげに微笑みかける。イラッイラする。
「ただいま。ただいま、みんな!」



「ったく、寄ってたかって千歳にベタベタしやがって。」
千歳は俺の女なのにっ。
「榊?どうした?こんなところで。」
いつの間にか後ろに千歳がいた。
「何でもないっ!」
「何で怒ってるんだ?」
「怒ってねぇよ!」
「そうか…。」
シュンとして俯く。悪いことをしたかな。
「あ、そういえば。」
パッと顔をあげる。
「後で、私の家族を紹介しよう。みんないい人たちだから、きっと好きになるぞっ。」
満面の笑みで言う。何か…胸の辺りが痛い。触っても血は出てないのに。
「榊?どうした?痛いのか?怪我したのか?」
俺…俺は…。