「で、これ渡すだけで済まないですよね。用事って」
ああ、と長瀬先輩は頷く。
……そして、重い口を開いた。
「……雪城ユカリの面倒を見てやってくれないか?」
……へ?
今日は理解に苦しむ事態が多いなあ。
とりあえず、
「なんで僕が?」
一つ一つ疑問を潰していこう。
「顧問に言われたんだがな、お前部長だろ。任せようと思って」
「いやいや、先輩がやればいいじゃないですか」
自分の仕事を人に押し付けないでください。
「うるさいなあ。こっちはこっちで受験勉強とか忙しいんだよ。クリスマスも正月も潰れるんだよ」
そんなことを言っても、先輩は直前まで受験勉強をしないだろう。
二年間の付き合いでそんな人だというのはわかっている。
「大体、僕には生徒会の仕事があります」
「どうせ彼女の監視だろ?それを口実にサボっちまえ」
そうだけど。
「なんでそれを知っているんですか?」
おかしい。
このことは生徒会が直接会って話した機密事項のはずだ。
それは、麻田が言っていた。
「その顔は納得いかないって顔だな。――奴らはメールを使わなかったらこっちに情報が伝わらないと思っているが、甘いよ」
どうやら情報漏洩に繋がる犯人は長瀬先輩のようだ。
いや、薄々感づいてはいたけれど。
しかし、その関連では麻田も強い。
長瀬先輩には劣るかもしれないが、盗聴されているのはわかっていて情報を流したに違いない。
――はめられた。
僕はそう思った。



