そのまま、僕らは帰路に着いた。
ほんの少しだけど、ユカリさんの事情を聞いた。
昨日の夜、急に知らされたこと。
すでに決まっていて、もう撤回ができないと言うこと。
その土地は、ずっと遠くだということ。
明日には出て行ってしまうということ。
あと、いろいろ。
僕らはこのまま、別れてしまうのだろうか。
ユカリさんは疲れて、バスの中で寝てしまっていた。
僕は一人、この状況を打開する方法を思案していた。
終わって欲しくないと願っても、ユカリさんの家に着いてしまった。
僕らは別れを告げず、ただ立ち尽くすばかり。
そこで、僕は一つの事を決心した。
「ユカリさん」
「……はい」
ユカリさんは力なく返事する。
「もしも、キミが別れたくないって言うのなら……」
もしもキミが決心してくれるなら。
「僕は待っているから」
僕は彼女に思いを伝える。
最後になって欲しくないから、この思いを伝える。
「うちの学校に『願いの木』ってのがあるの、知ってるよね」
「はい」
うちの学校には『願いの木』なんて呼ばれる大樹がある。
その木は願いを天に届けてくれるという、故事に基づいて、生徒がよく告白に利用する。
僕も、その意味で、
「明日、『願いの木』の下で待ってるから」
「でも……私は……」
わかってる。
でも、もしキミが望むのなら。
「それでも、キミを待っているから」
そう言って、僕は駆け出す。
夜道の向こうへ。
気がついたら、雪が降り出していた。
雪はすぐに溶けるような雪じゃない。
明日は積もりそうだった。



