彼女は切り出す。
それは僕が朝から募らせていた不安。
彼女が今日一日中隠してきた不安。
それを隠すように、彼女はいつもの笑顔を作って、僕と目を合わせた。
「ショウタさん。今日は楽しかったです」
「僕もだよ。ユカリさん」
いつもより長くユカリさんと一緒にいられて。
本当に楽しかった。
「誘ってくれてありがとう」
僕は感謝の言葉を口にしていた。
「……私も」
ユカリさんは嬉しそうな笑顔。
「私も……ありがとうございます」
僕らの視界は百八十度開け、沈む日が、赤に染まる町が一望できた。
「ショウタさんに……伝えないといけない事があります」
ユカリさんは、口にする。
その声は悲しみを帯びていた。
僕は耳を塞ぎたい衝動を我慢する。
僕は聞かなくちゃいけない。
「私……」
彼女が決心したのなら。
「私……引越ししなくちゃいけなくなったんです」
僕は自分の耳が正常なのか疑った。
いや、むしろこんな幻聴を聞かせる耳なんかいらないと思った。
彼女が僕から離れていく事実なんて、いらなかった。



