キミを待っている



校舎の外に出ると、空気が冷たかった。

さすがは十二月と言ったところか。
寒いものは寒い。

雪城さんは上着にマフラーに手袋といい装備だった。
僕も明日から重装備して来よう。

「藤沢さん、寒くないですか?」

「……そういうのは普通男の方が聞くものじゃないかな?」

外見からしてみれば僕の方が寒そうなのだが。

「そうですね……」

雪城さんが笑った。

それを見て僕は安心した。

情報処理室の前にいる雪城さんは、不安で押しつぶされそうな顔をしていたから。

今日一日でだいぶ、緊張がほぐれたかも。

「あ、バスが来ましたよ」

雪城さんは、根は明るいのかもしれない。





バスの中は結構な人がいたが、やっぱり寒かった。

それでも、隣に座った雪城さんのおかげで少しは暖かく感じられる。

「バスはどこまで降りるの?」

僕より遠かったら少し面倒だ。

「市民体育館前です」

市民体育館……ここからバス停二つの近いバス停だ。
良かった。僕よりも近い。



「そういえば」

これは言っておかなくちゃいけない。

「僕は生徒会に出なくちゃいけないから、明日は少し遅れるかもしれない」

本当は丸々生徒会に出ていなくちゃならない日なのだけれど、適当に言って抜けてこよう。

「僕が来るまでは森とか周りの人に教えてもらってね」

一応パソコン部にいる人間は外聞を気にしない人間が多い。

自殺未遂というのもきっと大丈夫だろう。

……自殺未遂。

「はい。わかりました」

どうしてこんな人が、自殺を図ったりしたのだろう。

僕には見当がつかなかった。