キミを待っている



「雪城さんも少し勉強すればすぐにこういうのが作れるようになるよ」

「いえ、私はそんな才能……」

言って、雪城さんはうつむいてしまう。

ちょうど僕は横顔しか見えないので、眼帯で彼女の目が見えなかった。

彼女は今、どんな目をしているのだろう。

……暗くなったのでとりあえず、話題を変えよう。

「雪城さんのユーザーもあるから、こっちの空いた席に来てやってみよう」

そう雪城さんを促した。

「ボクは頑張ってこのゲームをクリアします」

「あんまり遊んでばっかでいるなよー」

森は純粋だと思う。





空いたデスク。

パソコン本体の起動ボタンを押す。

小さな音を立てて、ハードディスクが回転。

ディスプレイが明滅し――ここまで来て、やっとパソコンが起動したように見える。

実際は動かせるようになるまでが起動なのだけれど。

「パソコン使うのは初めて?」

「いえ、授業で少し」

ああ、確かに授業があったね。

僕には非常につまらなくかった。

けれどテストのとき勉強する教科が少なくて助かった憶えがある。

「じゃあ、基本の操作はわかるよね。クリック、ダブルクリック、右クリック、ドラッグ」

「はい」

テストの内容はそれより一歩進んだものだったかな。

雪城さんは真面目に勉強してそうだから、パソコンも一から教えていく必要もないだろう。