朝起きると彼女は両親と居間にいた。
「遅くなってすいません。おはようございます」
彼が挨拶をすると、父親が彼を見て小さく頷いた。
居間のテーブルで彼女は泣いていた。動かなくなった金魚をティッシュで包みながら。 「ああいうお店の金魚は弱いからすぐ死んじゃうのよ。仕方ないよ」
お母さんが彼女の肩を優しく叩く。
「昨日までこの金魚、あんなに元気だったのに…死んじゃう時って呆気ないんだね」
彼女以外の全員が目を合わせる。
「この金魚、昨日まで自分が死んじゃうなんて夢にも思わなかったんだろうね。どっちが幸せなんだろう…死んじゃうって知ってるのと…知らないのは…」